スピーチの構成は、冒頭・本体・結びの3部が土台である。ここまでは場面を問わず変わらない。迷いが生まれるのは本体の並べ方で、結論から並べるか、時間の順で運ぶか、前と後を対比するか。この選択はセンスではなく、目的・聴衆・持ち時間という条件で決まる。このページは構成クラスタの入口として、型の全体地図と、自分の場面に合う記事の選び方を渡す。
型の全体地図 — 3部の土台と、本体の三つの並べ方
まず土台の3部を確認する。冒頭は「何の話か」と「聞き手との接点」を一文ずつ。本体が中身の本番。結びは、聞き手に持ち帰ってほしい一文である。このうち本体の並べ方には、大きく三つの選択肢がある。
| 並べ方 | 向く条件 | 向かない条件 |
|---|---|---|
| 結論から並べる | 報告・提案など判断が目的。持ち時間が短い。聞き手が忙しい | 祝いの場で、結論だけが浮いてしまう場面 |
| 時間の順で運ぶ | 思い出や経緯を渡す。祝辞・紹介・振り返り | 結論を急ぐ報告。経緯が長く持ち時間を食う場面 |
| 前後の対比で見せる | 変化や提案の効果を示す。改善報告 | 対比の材料が片側にしかないとき |
三つに優劣はない。同じ内容でも、朝礼で話すなら結論から、結婚式の祝辞なら時間の順が収まりやすい、というだけである。文化審議会国語分科会の報告も、言語コミュニケーションで意識する要素として正確さ・分かりやすさ・ふさわしさ・敬意と親しさの四つを挙げ、場面に応じたバランスの取り方を促している。構成の型選びはこの「ふさわしさ」の作業であり、正解を一つ暗記する作業ではない。
場面の一文 — 誰として・何分・誰に向かってを先に書く
場面の一文とは、立場・持ち時間・聴衆の三つをまとめた一文のことである。型を選ぶ前に、これだけを書く。
- 「朝礼当番として、3分、同じ部署の15人に」
- 「友人代表として、3分、両家の親族と職場関係の80人に」
- 「担当者として、10分、決裁する部長と関係部署に」
一文が書けると、選択は連鎖して決まる。持ち時間が短ければ結論から並べる型に寄り、聴衆が親族なら時間の順に寄り、決めてほしいことがあるなら根拠の絞り方が次の課題になる。逆に、この一文を飛ばして例文から入ると、条件の違う他人の原稿に自分を合わせることになり、当日まで違和感が残る。
持ち時間と場面からの入口
一文が書けたら、条件の近い記事へ進む。
- 持ち時間3分で、まず一本仕上げたい — 3分スピーチの本番前。逆算・組み立て・削り方まで一続きで扱う。
- 社内で何かを決めてほしい発表 — 社内プレゼンの本番前。結論・根拠・頼みの並べ方と想定問答。
- 1分の朝礼スピーチ — 朝礼スピーチの本番前。毎週回ってくる短い型。
- 1分の自己紹介 — 1分自己紹介の本番前。
- 結婚式で話す — 結婚式スピーチの本番前。友人代表・主賓・乾杯と立場別に分かれる。
- 構成より先に震えが気になる — 構成の記事では緊張の対処を扱わない。全社発表の本番前から、症状別の記事に進んでほしい。
構成クラスタの記事一覧
- 3分スピーチの本番前 — 構成と作り方 — 自分の音読で3分を測り、削って収める。
- 社内プレゼンの本番前 — 説得力は構成で仕込む — 決裁者からの逆算と想定問答。
- 発表練習の本番前 — 1週間の進め方 — 構成が決まった後の、通しと修正の割り付け。
次に読む1本
持ち時間が決まっている人は、その長さに一番近い記事へ。決めてもらうための発表なら社内プレゼンへ。構成はもうできていて練習の進め方だけ知りたい人は、発表練習の記事へ進む。迷ったら3分スピーチがよい。3部の土台を一番小さい持ち時間で一巡でき、ここで作った型は他の場面にもそのまま持ち出せる。
今夜やることは一つでよい。場面の一文を書き、本体の並べ方を仮に一つ選ぶ。原稿はまだ書かなくてよい。