3分スピーチの支度で最初に決めるのは、話題でも書き出しでもなく、測り方である。3分という枠は思ったより狭く、書き上がった原稿はたいてい溢れる。溢れたときに「速く読む」を選ぶと、練習するほど早口が固まる。この記事は、計る・組む・削る・練習するの順で、3分に収まる原稿と当日の手順を渡す。
3分からの逆算 — 文字数の換算より音読で測る
「3分スピーチは何文字か」から入ると、換算表の数字に原稿を合わせることになる。だが話す速さは、人によっても、マイクの有無や聴衆の人数によっても変わる。換算表の代わりに、自分の60秒を測る。
- 手元にあるどんな文章でもよいので、普段人に話すつもりの速さで60秒音読する。
- 読めた字数を数え、3倍する。それが自分の3分の器である。
- 原稿はその器の九分目までにする。本番は間が増えて、練習どおりの速さにならないことが多い。
この測定は最初の一回だけでよい。以後は原稿を書くたびに、字数ではなく音読のタイムで確かめる。
冒頭・本体・結びの作り方
配分の目安は、冒頭30秒・本体2分・結び30秒である。これは規則ではなく、削るときの守備位置を決めるための整理である。
- 冒頭は二文。何の話か、そしてなぜこの場の聞き手に関係あるか。
- 本体は、結論一つに、理由か具体例を二つまで。三つ目を入れたくなったら、それは別の回のネタ帳に移す。
- 結びは、聞き手に持ち帰ってほしい一文。ここだけは削らない。
条件つきの例を一つ置く。朝礼当番として、3分、同じ部署の約15名に話す場合の冒頭と結びである。例は創作なので、場面が違えば条件のほうを直してから使う。
冒頭「今朝は、先週の展示会で一番驚いたことを話します。準備した資料より、帰り際の雑談のほうが役に立った話です」 結び「来週の商品説明でも、説明のあとの一往復を意識してみます。皆さんの直近の一件でも、試す場面があれば思い出してください」
文化審議会国語分科会の報告は、伝え合いで意識する要素に正確さと分かりやすさを並べて挙げている。3分の枠でこの二つを両立させる現実的な方法が、結論を一つに絞ることである。正確に話そうとして条件や経緯を足すほど、分かりやすさが減る。足したくなった情報は、次の節の基準で削る。
削る基準 — 入らないときに何を残すか
計って超過が出たら、言いたいことを一行ずつ書き出して、結論に効く順に並べ替える。削るのは下からである。たいてい、先に消えてよいものは決まっている。
- 前置きと自己弁護(「うまく話せるか分かりませんが」など)
- 二つ目以降の具体例
- 具体例の中の細部(日付・人数など、結論に効かない数字)
反対に、最後まで残すのは結びの一文、次が結論、その次が一番強い具体例一つである。削った素材は捨てずにメモへ戻す。3分スピーチが定期的に回ってくる職場なら、削った半分がそのまま次回の種になる。
練習1回分の手順
練習は長くやるより、計って一巡するのを一回と数える。
- ストップウォッチを回し、つかえても止まらず最後まで通す。
- タイムと、引っかかった場所を一つだけメモする。
- 直すのはその一箇所だけ。文を短くするか、言いにくい語を言い換える。
- 仕上げに冒頭と結びの一文だけ、もう一度声に出す。
これで15分あれば足りる。何日かに分けて回すときの割り付けは発表練習の本番前に譲る。
当日の朝と直前
当日の朝は、計った通しを一回だけ。うまくいかなくても、そこからの書き直しはしない。直前は全文を読み返さず、冒頭と結びの一文だけを目でなぞる。順番が回ってくる間際に見るものが少ないほど、立ち上がりは軽くなる。
声の震えが心配で原稿が頭に入らないという人は、構成ではなく緊張の支度が先である。発表で声が震えるときの対処に分けてあるので、そちらから読んでほしい。緊張は3分では消えない。消えないまま、結びの一文だけ守って戻ってくれば、この支度は成功である。
